ただし、2020年4月21~30日に催される予定だった第16回北京モーターショー「オートチャイナ2020」は、新型コロナウイルスの影響で9月26日~10月5日に延期された。
本稿では筆者が2013年から2019年の7回にわたって現地で取材したショー展示車を回顧する。それによって、中国の自動車が近い過去に、どう変化してきたかを示したい。
第1回は「“何か”に似ていた車たち」と題し、他メーカーのデザインを模倣・参考したことを匂わせる中国ブランド車およびコンセプトカーを収集した(以下、車両のデビュー年と展示年は必ずしも一致していない)。






























過去に各国メディアで報じられてきたとおり、中国モーターショーには米欧日のデザインを模倣したと思われる車両が頻繁に登場し、そのたび議論を巻き起こした。模倣される側のデザイナーとしては、フォルムはおろか、ウェストラインの1ミリメートルを修正しながら最適解を追求した結果到達したオリジナルだ。それだけに、彼らの悔しさが偲ばれる。
ハーグ協定のジュネーブ改正協定に基づく「意匠の国際登録制度」に、いまだ中国が加入していないのも歯がゆいところだろう。さらに、北京汽車とダイムラーのようにグループに合弁会社があったり、資本関係が進むと、さらにデサイン模倣を指摘しにくくなる。


1924年のオペル『ラウプフロッシュ』はシトロエン『5CV』のデザインを参考にしていた。1936年『トヨダAA型』はデソート『エアフロー』の流線型から学習したのは有名な史実である。1959年メルセデスベンツ『Sクラス(W111)』のテールフィンは、当時同社にとって最大の輸出市場であったアメリカのトレンドを取り入れたものであった。
今回取り上げた過去数年は、現地系中国ブランドがデザインを参考にしながら、自らの解釈を模索する、いわば学習の最終段階であったといえる。模倣の是非は、次の段階でいかに独自の解釈を高度に織り込めるかで決まる。それは美術の世界において、先人の遺した作品を足がかりに新たな表現ができるか、それとも贋作に留まるかというのと同じである。
次回以降紹介するように、すでに中国には、外国のデザイン会社や外国人デザイナーの力を借り、模倣から脱してオリジナル性を真剣に模索しているブランドがある。それだけに、一部メーカーによる志なき模倣デザインによって、中国車全体の評価が落ちることは極めて残念なのである。